さて、本日紹介するのは、『今日から俺は!!』などでも知られる西森博之の名作学園ヤンキーコメディ漫画『お茶にごす』です。
2007年から『週刊少年サンデー』で連載され、全11巻で完結しています。
ヤンキー漫画ながら作風がコメディ調なので、かなりアッサリ読めるのも特徴の一つです。
加えて内容も非常に面白い漫画なのですが、絵に大変クセがあるためかあまり知名度が高くありません。
一見して画力を理由に読まないのは勿体ない!と思えるほどの名作なので、この機会に『お茶にごす』の魅力を紹介していきます!
それでは、本編に参りましょう!
1.『お茶にごす』のあらすじ
船橋雅矢はその風貌と佇まいから、何かとつけて喧嘩を売られてしまう悲運の星の下にあったが、その度に撃破してしまう強靭なパワーも持ち合わせていた。
このため中学時代には最強の不良・“悪魔(デビル)まークン”の異名を取るに至っていたが、高校入学を機に暴力の道から抜け出し、平穏に暮らしたいと願う。
しかし、部活動新入生勧誘で賑わう校庭を歩くも、どの部も彼の恐ろしい見た目から、目を合わせる事すら避ける。
そんな中、茶道部部長・姉崎奈緒美だけは目を逸らさず、自分を茶道部に勧誘し、さらに彼女のその行為に反発する後輩(一歩先に入部していた同級生・浅川夏帆)に「仮にも茶道を志す人間が、人を見た目で判断してはいけませんよ」と諭すのを聞き、彼女に興味を持って入部を決める。
こうして雅矢の脱不良計画が始まる。相変わらずの見た目と過去の悪名から、なかなかに前途多難であるものの、周囲に少しずつ理解者や友人を増やしながら、高校生活を謳歌していく。
出典:Wikipedia
このあらすじにもあるように、学園・ヤンキー・コメディ・茶道漫画とかなり属性がてんこ盛りなのが特徴です。
ただ、ヤンキー漫画というのは事実なのですが、男塾やろくブルなんかとは違って漢の生き様みたいなものが主題ではないので、あくまで主題はコメディだということを押さえておいてください。
2.『お茶にごす』の感想
画像出典:https://www.ebookjapan.jp/ebj/249275/
さて、今作の感想としてまず読者が真っ先に思い当たるであろうものに「絵がかなり特徴的」というものがあります。
1巻を読んでいただいた方は分かると思いますが、芸術的な特徴というよりはむしろ技術的な問題といえそうです。
そのため、ハッキリいってしまえば今作よりも画力に優れた漫画はいくらでもありますし、そこは欠点と言えそうに思えます。
しかし、読み進めていくと気にならなくなるどころか、すごく魅力的に感じるようになります!
正直、女性キャラクターを描くのがあまり得意ではないという印象があり、今作も一枚絵だと画力的にはあまり褒められたものではありません。
それにもかかわらず、読み進めていくとそうした画力で描かれている女性キャラクターがめちゃめちゃかわいく見えてきます。
しかも、画力そのものは決して成長しているわけではないにもかかわらず、そう見えてくるのです。
それでは、どうしてそう思えたのかをここから考察しつつ、感想を書いていきます!
また、ネタバレには注意してください。
1.まーくんに山田、夏帆や部長などキャラクターの魅力が素晴らしい
主人公のまーくんは、優しい男になるべくさまざまな取り組みに精を出します。ただ、そもそも世の中のことを全く知らないので、善良な心をもっているにも関わらず目論み通りにことが運びません。
まず、この様子がコメディとして非常に面白いです。例えば、序盤の茶道部部室の掛け軸にあった「一期一会」を「いっきいっかい」と読んでしまい、夏帆に激怒されるシーンはめちゃめちゃ面白いです。まーくんは「そういうお茶会があると思って…」といたって本気で返答します。
しかし、そうしてコメディとして笑っているうちに、最強なのにどこまでも純粋で優しいまーくんが愛おしく感じられるようになります。
これは、昔からお馴染みの「最強のウドの大木は心優しい」現象(いま命名しました)にコメディを追加したという単純な構図ですが、その絵柄も相まって心から応援したい気持ちにさせられます。
他にも、一見軽そうでまーくんを一番理解している山田、心優しくもどこか抜けたところのある部長、人を褒められず超短気だが正義感の人一倍強い夏帆ちゃんなど、茶道部メンバーはものすごく魅力的です。
ヤンキー漫画なので、彼らの妨害をするのは20年前くらいからタイムスリップしてきたような典型的な小物チンピラばかりなのも特徴です。四六時中因縁をつけますが、まーくんが最強すぎて全く相手になりません。
こういったヤンキー漫画要素も一応ありますが、敵がザコすぎるのでバトル的な面白さはあまりありませんし、喧嘩のリアリティもありません。
ただ、そんなチンピラに対し「いかに手を出さないか」ということを徹底して描いてきます。これは、優しい男になり、ロハスな生活を満喫するために考え出したまーくんの答えなのです。
つまり、ムカつくキャラクターは全部チンピラが担当しているため、主要キャラにイラつくことはないと思います。
2.少しずつ打ち解けていく面々にかわいさを感じつつ涙もほろり
茶道部とヤンキーの接点は、現実ではせいぜいカツアゲするされるの関係ぐらいしかないでしょう(偏見)。
ところが、今作では最強ながら世間知らずでアホなまーくんと山田が茶道部に入部するという、異色の組み合わせが用意されています。
当然茶道部部員は嫌な顔をしますが、聖人・姉崎部長は彼らの入部を許可します。
はじめのうちはついつい暴れまわってしまった彼らですが、部長に恋するまーくんは彼女の言いつけを守ろうと努力し、しだいに本当の「優しい男」になっていきます。
すると、部員たちも彼らを受け入れるように。
このギャップをコメディベースに生かしつつ、ヒューマンドラマの要素もそれとなく自然に描かれているというところに、構成の妙を感じます。
終盤には、何度挑発されても手を上げなかった彼らより先に部員の夏帆が手を上げるなど、コメディタッチながらスカッとする場面もあります。
また、もちろん部長も可愛いのですが、部長に恋するまーくんのほうがもっと可愛いと思いました。
さらに、まーくんに狂犬と称される夏帆も本当に良いキャラをしていて、小動物的な可愛さを感じます。
3.打ち切りのため終盤が駆け足気味だが、最終回は最高
ここまで非常に面白い漫画であると紹介してきましたが、終盤が少し駆け足気味になってしまうというのは気になりました。
部長の引退というテーマを書いた後、おそらくこれ以上魅力的な内容にはならないという判断だったとは思いますが、その後卒業までの半年が数話で片付けられてしまいます。
その判断自体はやむを得ないかなとも思いますが、やはりもう少し終盤を丁寧に描いてほしかったと思わずにいられません。
ただ、無理に引き伸ばしで中だるみしたり、グダグダになったりする前に完結させたのは好印象です。
もちろん、欲を言えば15巻くらいまであるとちょうどよかったようにも思いますが。
結局、部長とはうまくいったのでしょうか。最終回の引きが素晴らしかっただけに、彼らのその後が気になってしまいますね。
個人的には、まーくんならきっと大丈夫だと思います。ただ、あの世界観だと定期的に部長に危機が訪れそうな気もしますが…。
3.まとめ
ここまで、『お茶にごす』の紹介をしてきましたが、いかがだったでしょうか。
世の中にはヤンキー漫画やコメディ漫画は数多くありますし、茶道漫画もありますが、それを全部組み合わせてしまった漫画は唯一無二なのではないかと思います。
ゲラゲラ笑いながら読んでるうちにキャラに愛着がわいてきて、読み終わるとほっこりする気持ちとさみしい気持ちの両方に襲われること間違いなし!
ぜひ、一度読んでみてください!