誰もが一度は「ラブコメ」的な恋愛に憧れるもの…。
しかし、恐らくラブコメが好きな読者ほど「あれ?こんな都合のいいこと現実にはなくない?」という悲しみを体感していることでしょう。
そこで、この記事では「ラブコメでは当たり前」になっているけど、よく考えると「都合よすぎない?」という「ラブコメあるある」を洗い出し、さらにそのあるあるが作品内でどうして必要とされるのかを徹底的に考察していきます。
1.そもそも「ラブコメ」ってなに?意味と歴史
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さて、まず本論に入る前に前提として「そもそもラブコメってなに?」という基本的なところを整理しておきます。
「ラブコメ」と言われると大体想像できるものは同じだと思う一方で、皆さんは「ラブコメ」という単語の定義や意味をしっかりと説明することはできますか?
私自身「これは意外と難題だな…」と感じたので、まずそのあたりを押さえておきましょう。
ラブコメは「現実を極端に逸脱した物語」
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そもそも、この「ラブコメ」という言葉自体は当然ながら俗語なので、厳密な定義が存在するわけではありません。
そこで、Wikipediaの「ラブコメ」頁が一番的を射た解説をしていたので、そちらの文章を引用して解説します。
ラブコメディ(英: Love Comedy)は、日本における漫画、アニメ、ドラマ、小説等のジャンルの一つ。主に恋愛を主題にしたコメディ(喜劇、笑い)の要素が強い明るい作風の作品が当てはまる。略称はラブコメ。
欧米でいうロマンティック・コメディ(romantic comedy)が非日常の特殊な状況における主人公たちの恋愛心理の機微を一回性の物語で描くのに対して、むしろシチュエーションコメディの要素を積極的に取り込み、現実にありそうな日常の設定の一部分を極端に逸脱した状況を仮想設定したうえで主人公の恋愛関係に焦点をあて、毎回異なった状況下で周囲を巻き込んだ事件や混乱が繰り返されるドタバタ喜劇(スラップスティックコメディ)的要素の強い作品が主流を占める。
元来少女漫画の世界では、ドタバタ喜劇的要素を伴った恋愛漫画(特に『おくさまは18歳』(原作1969 – 70年連載)は典型的なスタイルを生み出した作品とされる)を指していた用語だったが、1970年代の終わりから1980年代の前半にサンデーの『うる星やつら』(高橋留美子、1978 – 87年連載)、ビッグコミックの『みゆき』(あだち充、1980 – 84年連載)、マガジンの『翔んだカップル』(柳沢きみお、1978 – 81年連載)などの作品のヒットによって少年漫画の世界にも近似の手法が確立した時代に、「ラブコメ」という略称とともに広く一般に定着した。サンデー(小学館)などは後述の『タッチ』等ラブコメ作品が多めでラブコメ路線とも呼ばれた。
(中略)
「ラブコメ」と称される作品には、前述のようにギャグ的要素の強いスラップスティックコメディやシチュエーションコメディをベースとする作品から、ギャグ・コメディ要素は少なくストーリー性の強い青春活劇をベースとする作品まで幅広く存在するが、恋愛や明るさ・ハッピーエンドという要素を含んでいるという点では共通しており、安定的に人気の定番ジャンルの一つとなっている。また、少しでもこれらの要素が含まれていればラブコメディの範疇に含める場合もある。コメディ要素の強めなラブコメディには、パロディとの親和性も高いものもある。
この説明、個人的にはけっこう興味深い内容になっていると思いました。
私が特に気になったのは、
現実にありそうな日常の設定の一部分を極端に逸脱した状況を仮想設定したうえで主人公の恋愛関係に焦点をあて
という部分。
この内容を見る限り、ラブコメというジャンルはそもそも「現実を極端に逸脱している」ものであり、それでいて日常的な文脈に位置付けられていることになります。
難しい説明ですが、要は「朝に家を出たら道の角でパンをくわえた美少女とぶつかる」というシチュエーションは「ありそうでないでしょ」ということを言っているのです。
これ、当たり前のようにラブコメを楽しんでいる我々がいざ認識すると、結構ショックじゃありません?
考えてみれば当たり前とはいえ、「君たちの見ているそれは『現実を極端に逸脱した世界』だから」と言われているわけで。
「そうだけど…そうなんだけど!」と反論したくなります。
そして、ここからツッコミを入れていく部分は、この「極端に逸脱した」部分でもあるわけです。
2.王道だけどありえない?ラブコメ「あるある」10選
ここからは、なんやかんやでかなりラブコメ好きな私が独断と偏見で選んだ「あるある」を10個ほど列挙していきます。
様式としては、「あるある」の存在と現実からの逸脱度を解説したうえで、一歩踏み込んで「どうしてその『あるある』は『あるある』と呼ばれるに至ったのか」という製作上の都合も考察していく感じになっています。
そのため、内容に共感するもよし、現実でもあり得ると反証するもよし、ラブコメを全否定するもよし、というある意味で万人向けの内容になっているかも?
なお、私は主に男性向けのラブコメ作品を鑑賞しているので、女性の方はあんまり共感できない可能性があります。ご了承ください。
1.主人公に惚れてるツンデレ幼馴染
まず、物語冒頭で出会うメインヒロインorヒーローは昔からの鉄板で「幼馴染」の確立が高いでしょう。
また、完全な偏見ですが、幼馴染のツンデレ率もかなり高いような気がします。
たいていの場合家に起こしに来るという謎イベントが搭載されており、幼馴染でいまのままの関係を続けようとしているところに新たな出会いが生まれ、主人公を取られる危機感から関係が進展しがちです。
ただ、率直に言って皆さんの幼馴染で「異性」かつ「魅力的な容姿」の「ツンデレ」っていますかね?たぶんいないと思いますけど。
現実での遭遇率と創作での遭遇率を考えると、やはりラブコメあるあるといって差し支えないでしょう。
ちなみに、「あるある」になった理由ですが、上でも書いたように幼馴染の存在は物語の展開を動かしやすくなりますし、好意を表に出さない理由も同様と考えられます。
単純に「クラスメイト」というよりも描けるイベントが増えますからね。
2.中高生にも関わらず両親の海外出張からの一人暮らし
これは男性向けの作品に多い印象ですが、ラブコメ作品の主人公はかなりの確率で両親が不在かつ一人暮らしをしている傾向にある気がします。
そして両親が家を離れる理由は死別や離別ではなく海外出張である点もミソです。
しかし、よく考えてみると中高生の子どもを一人暮らしさせて海外に行きますか?という点は見逃せません。
これもラブコメあるあるにカウントできるでしょう。
しばしば採用される理由としては、主人公の家におけるイベントを描きやすくするためでしょう。
家に両親がいなければ、部屋の中での交流を充実させることができます。
また、両親を海外出張させる理由は、「死別」や「離別」だとそのあたりの描写も必要になってしまうので、「一番上手に両親を家庭から消す方法」として編み出されたと見るべきです。
ちなみに、この副作用?として、たいていの主人公が料理好き設定を付与されます。
3.わかりやすい個性を有したキャラの多さ
ラブコメ作品のキャラたちは、基本的にこれでもかというほど分かりやすい「個性」を有している気がします。
主人公に惚れる系のキャラは、ツンデレ・ドジっ子・無口で外見もバラバラかつ魅力的に描かれることが大半です。
もちろんそんなに個性的な人間はいないので、これが「極端な逸脱」の一番いい例でしょう。
また、あくまでイメージですが「惚れ役」のキャラ以外の場合、男性向けラブコメなら気のいい男の友人、女性向けラブコメなら嫌味な女友達は欠かせません。
キャラを魅力的に描く理由は言うまでもないですが、個性が尖ってしまうのは「キャラクターの分かりやすさ」を重視した結果でしょう。
主人公以外のキャラが多くいる場合、多くの描写を特定のキャラクターには割けませんからね。
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