昨日は日本の野球ファンならば誰もが衝撃を受ける「イチロー引退」というニュースが飛び込んできました。
正直、個人的には昨年休養に入り、今年の開幕戦が日本で行なわれるという事を知った時点でこうなることは分かっていましたが、それでもショックは大きいです。
そこで、本日は偉大なる野球選手の引退を踏まえ、イチローが「メジャーリーグ」で残した全成績や指標、記録をもとに、歴史の中におけるイチローの存在を考えていきます。
なお、本文中では原則敬称を略しています。
1.「メジャーリーガー」としてのイチロー
さて、本論に入る前に、まず先ほどから「メジャーリーガー」という単語を強調している理由についてお話していきます。
とはいっても基本的に読んで字のごとくなのですが、この記事では「メジャーリーガー」としての活躍「のみ」に触れていくという事です。
つまり、愛工大名電やオリックス時代の活躍については扱いません。
また、WBCでの活躍についてもアメリカでの知名度が低い、という理由で扱いません。
そもそも、この記事を書く目的は「メジャーリーガー」としてのイチローはMLB界でどのように評価され、歴史的に位置付けられるのかを検討していくことです。
そのため、基本的に「100年以上続くメジャーリーグの一選手」という観点からイチローの現役生活を見ていきます。
こうした記事を書く動機は単純で、日本人野球選手というくくりでは議論の余地なくイチローがナンバーワンだからです。
そのイチローが、メジャーリーグの長い歴史の中でどれほどの位置に存在する選手なのか。
個人的には、その点に非常に関心があります。
2.「メジャーリーガー」イチローの通算成績と指標
さて、ここからは「メジャーリーガー」としてのイチローが現役生活の中でどれほどの成績を残したのかを整理していきます。
また、現代メジャーリーガーを評価するには各種指標の存在も欠かせないので、それも可能な限り触れていければと思います。
1.「メジャーリーガー」イチローの通算成績
試合数:2653(37位) 打数:9934(30位) 得点:1420(89位) 安打:3089(22位) 二塁打:362(264位タイ) 三塁打:96(173位タイ) 本塁打:117(724位タイ) 打点:780(514位) 四球:647(437位) 三振:1080(264位タイ) 盗塁:509(35位タイ) 盗塁死:117(64位タイ) 打率:.311(68位) 出塁率:.355(339位) 長打率:.402(532位) OPS:.757(532位) 敬遠:181(26位) 死球:55(384位タイ) 犠打:50(圏外) 犠飛:48(378位タイ) 塁打数:3994(93位) 長打数:575(361位タイ) 併殺打:92(794位タイ) ゴロアウト数:3629(1位) フライアウト数:2090(14位) ゴロアウト/フライアウト:1.58(18位) 球数:39186(3位) 打席数:10734(47位)出典:fullcount(カッコ内はMLB全体通算成績での順位) |
以上がイチローの全成績とメジャーリーグ全体での順位となります。
こうして成績を眺めていくだけで、「日本人メジャーリーガー」としてだけでなく「メジャーリーガー」としてもレジェンド級の成績を残していることがわかります。
さらに、安打数などに関しては印象より少ないと感じる方もいるかもしれませんが、彼が渡米したのは2001年と、現役生活も中盤に差し掛かったころであることを忘れてはなりません。
高卒選手とはいえプロ9年目での渡米は通算成績を語るうえで明らかに不利であることは明白でしょう。
ただし、「メジャーリーガー」イチローを評価するうえでは、上記の成績のみを検討材料にしなければなりません。
その理由は簡単で、残念ながらNPBで残した成績はアメリカであまり評価されないからです。
また、比較対象の他選手もマイナーリーガーだった時期があるわけで、「NPBを含めて3Aを含めない」というのは不公平になってしまいます。
2.「メジャーリーガー」イチローの指標
さて、次はイチローの指標をみていきましょう。
イチローが安打製造機ということは疑う余地もありませんが、現代アメリカではむしろ「守備や走塁」のほうが高く評価されているという点は事実です。
OPS:.757(532位) WAR(平均的な選手を0としてどれだけチームに貢献しているか):59.4(182位) wRC+(打撃傑出度):104(1000位外) isoD(四球獲得能力):0.91(1000位外) BB/K(選球眼):0.6(1000位外) UZR(守備得点):125.9(2002~2018で2位) Speed Score(総合走塁指標):6.5(457位)出典:https://www.fangraphs.com/ |
このように、とりあえずメジャーな指標を引っ張ってみると守備・走塁面の貢献度が上回っていることがわかります。
これは単純な理由からで、セイバーメトリクス上では「単打」があまり重視されず、イチローのバッティングスタイルの特徴が指標上評価されにくいためです。
それでも、比較的強打者に有利なOPSで1000位以内にランクインしているのは流石といえます。
また、WARが非常に高いのも特徴です。これは、選手としての総合力が高いことを何より示しており、イチローの真価は「走・攻・守」が三拍子そろっている点といえるでしょう。