3.鬼頭莫宏『ぼくらの』(全11巻)
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3冊目は『ぼくらの』です。(作者:鬼頭莫宏、全11巻)
あらかじめ宣言しておくと、この漫画はとんでもない激鬱漫画なので、心が弱い方が読むにはおすすめできません。
1.『ぼくらの』のあらすじ
夏休みに自然学校に参加した少年少女15人は、海岸沿いの洞窟でココペリと名乗る謎の男に出会う。
子供達は「自分の作ったゲームをしないか」とココペリに誘われる。ゲームの内容は、「子供達が無敵の巨大ロボットを操縦し、地球を襲う巨大な敵を倒して地球を守る」というもの。
兄のウシロに止められたカナを除く14人は、ただのコンピュータゲームだと思い、ココペリと契約を結ぶ。
その晩、黒い巨大なロボットと敵が出現する。ロボットの中のコックピットに転送された子供達15人の前には、ココペリと、コエムシと名乗る口の悪いマスコットが待っていた。
これが黒いロボット・ジアースの最初の戦いであった。
戦闘を重ねるにつれ、子供達はゲームの真の意味を目の当たりにすることになる。
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/ぼくらの
2.『ぼくらの』の感想
この作品は、一応ロボットSFというジャンルになるのではないかと思います。ただ、そのジャンルはこの作品の本質的な部分を語る際には、あまり意味を持たないでしょう。
若干ネタバレ気味ではありますが、この作品の見どころは
「お前が死なないと世界が滅ぶけど、どうする?」
という問いを投げかけられたとき、人は何を考え、そして行動するのかという点だと思います。
ロボットを操縦すれば死ぬ。しかし操縦しなければどちらにせよ世界が滅ぶ。
その決断を少年少女にさせるわけですから、言うまでもなく激鬱漫画であることは間違いありません。
ただ、もちろん人死にを観察することが楽しみ方ではありません。『ぼくらの』では、パイロットの啓示を受けてから、戦闘までに少しの猶予があります。
その期間、残された時間で少年少女たちはそれぞれ固有の問題や過去のトラウマに向き合います。その様子にはリアリティがあり、また心を揺さぶられるものがあるのです。
鬱耐性がそれなりにあって、人間というものの本質について考えてみたい人にはオススメの漫画です。
4.相田裕『GUNSLINGER GIRL』(全15巻)
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4冊目は『GUNSLINGER GIRL』です(作者:相田裕、全15巻)。
そして『ぼくらの』に勝るとも劣らない鬱漫画でもあります。
1.『GUNSLINGER GIRL』のあらすじ
「少女に与えられたのは、大きな銃と小さな幸せ。」
物語の舞台は架空の現代イタリアを中心としたヨーロッパ。イタリアは国内に地域間対立や思想対立を抱え、テロや暗殺などの暴力が絶えなかった。
イタリア政府・首相府は、表向きには障害者への様々な支援を行う組織として公益法人「社会福祉公社」を設立する。
しかしその実態は、身体に障害を持った少女たちを集め、身体の改造と洗脳を行い、反政府組織に対する暗殺をはじめとした超法規的活動を行わせる闇の面を持った組織だった。
少女たちは、「義体」と呼ばれる人工の肉体と引き換えに、時に危険すら顧みられることなく銃を手に戦う運命を背負わされた。
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/GUNSLINGER_GIRL
2.『GUNSLINGER GIRL』の感想
この作品は、幸せの定義というものについて考えさせられます。
改造された少女たちは、重度の身体障がいをもっていたために、厳しい生活を強いられていたという事実があります。そのため、改造によって自由な身体を得たこともまた事実なのです。
しかし、その見返りはあまりにも大きすぎました。危険な任務への従事は、常に死と隣り合わせであり、またたとえ無事に戦闘を切り抜けても改造の副作用によって寿命が大きく低下していました。
それでも、少女らしい純真なけなげさで日々を過ごし、時には将来や夢のことを語る様子は、心に残るものがあります。
ただ鬱々としているだけではなく、じわじわと命の炎が燃え尽きていくようなその様子は、作品の完成度を大きく高めています。
また、義体の少女に対して、少女の担当役である義体捜査官との関係性も大きな見どころの一つです。
あくまで作戦遂行の監視役でありサポート役という存在なのですが、昼夜共に少女と過ごすことで、やがて二人は友情やそれを超えた感情をもっていきます。
しかし、少女の命は決して長くありません。それどころか、少女たちを戦わせることのみが彼らの使命なのです。この葛藤に苦しむ様子もリアリティがあります。
自分が捜査官だったら、この少女たちとどう接するのだろうか。そんな風に感情移入しながら読むと、より楽しめる作品です。
5.羽海野チカ『ハチミツとクローバー』(全10巻)
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5冊目は『ハチミツとクローバー』です(作者:羽海野チカ、全10巻)。
これまでの二冊とは違って、鬱要素はほぼありません、ご安心を。
1.『ハチミツとクローバー』のあらすじ
浜美大に通う純朴青年、竹本。彼は花本研究室で知り合った森田、真山、あゆみら先輩美大生たちと騒がしくも楽しい学園生活を送っていた。
そんなある日、花本先生の姪のはぐみが入学してくる。
可憐な容姿に似合わぬダイナミックな絵を描くはぐに、竹本は一瞬にして恋に落ちてしまう。
突飛な行動を繰り返す森田もはぐに対し特別な興味を示す。
一方、いつもクールな真山は年上の女性理花に、実らぬ恋と知りながら一途な想いを寄せていた。
そしてあゆみは、そんな真山の想いを痛いほど分かっていながら、彼への気持ちを抑えることができないのだった…。
出典:allcinema
2.『ハチミツとクローバー』の感想
この作品は、ジャンルとしては青春群像劇に分類されるでしょう。
ただ、正直紹介するかどうか一番迷ったのはハチクロです。その理由はシンプルで、「もうみんな知っているんじゃないの?」と思ったからです。
実写化やアニメ化も成功していますし、一般知名度も高い作品です。
ただ、今回の条件にあてはまっていることと、コミックス版は意外と読まれていないのかも、と思ったので取り上げることにしました。
内容としては、美大生たちのままならない恋を軸に、寮生や学校関係の人々との青春模様を描いています。
基本的にはギャグ調で展開されていくのですが、ふとした瞬間に訪れるシリアスなシーンがアクセントとなり、考えさせられることもありました。
この作品からは、恋も遊びも悩みも含めて青春だ、ということを感じさせられます。
ギャグも軽快で面白く、肩の力を抜いて読むこともできるでしょう。
ままならない恋を扱っている以上、いわゆる「三角関係」を想起させるシーンもいくつかありますが、あまりドロドロとした印象はもちませんでした。
昼ドラ的な展開も嫌いではないのですが、基本的に作品の雰囲気が明るいので、関係性はわりあいフランクに描かれます。
もちろん、ハチクロのような青春を送っている人ばかりではないでしょう。
そのため、同年代となる大学生は、読んでいていろいろと感じることも多いと思います。
大学生の方は、ぜひ大学在学中に読んでみてください。
3.おわりに
ここまで、筆者なりに条件に合わせたおすすめの漫画を紹介してきました。
もちろん、他にも紹介したかった作品はたくさんありますので、機会があれば第2弾も実施してみたいと思います。
今まで少年誌しか読んだことがないという方も、ぜひいろいろな漫画に挑戦してみてください。
「友情・努力・勝利」も大切ですが、視野を広げてみることで、新たな好みが見つかるかもしれません。
今回紹介した漫画一覧
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